いや、正確に部活動とは認められていないので、今のとこ同好会かなぁ・・・?
*****
「バミリ」とは・・・。
例えば、お金がなくて固定の稽古場をもっていない劇団や、稽古場に本番用のセットを組むことが出来ない劇団の場合、
「舞台のサイズはここからここまで」
「こっから先は客席だよ」
「ここに段差があるよ」
「ここにパネルがあるよ」
「ここは通れないよ」
みたいなことを、床にビニールテープを貼ることで代用し、稽古をするのです。
これをきちんとやらないで劇場に入ると、稽古場の段階で出来ると思っていたことが劇場に行ったら実際にはできなかったりして、トラブルの元になるので、とても大事な作業なのです。
一般的には舞台監督の仕事ですが、お金がない劇団は自分たちでやるしかありません。
語源としては、「場」を「見る」から「場見り」というのが有力ですが、「場」を「切る」の「場切り」が変化した、なんて説もあります。
ちなみに「役者の立ち位置」や「道具の置き位置」なんかをテープでしるしをつける、というのも同じく「バミリ」と言いますね。
まぁ意味は同じです。
*****
「先生、俺たちバミリやりてぇんだよ! 顧問やってくれよ! 頼むよ、先生しかいねぇんだよ!
知ってるんだぜ、先生、学生の時、バミリでインターハイ行ってるんだろ!?」
『バミリ部・・・? ダメだダメだ。だいたい俺はすでに女子水泳部の顧問やってるしな。お前らの面倒まで見てられん』
「なんでだよ! アンタ、日本の演劇界にバミリを広げた第一人者だろう!」
『そんな昔のことを・・・あのな、バミリはお前らが考えてるような簡単なもんじゃないんだ。悪いことは言わん。怪我する前にやめとけ』
「だ、だからこそ、アンタに頼んでるんじゃないか! 俺たちにゼロからバミリ教えてくれよ! 誰だって最初は素人じゃないか!」
『だから俺はそんなにヒマじゃないんだよ。それに部員が5人揃わなくちゃ正確な部活動とは認められないのは知ってるだろう? お前ら二人で何が出来るんだ?」
「そ、それは・・・これからなんとかして仲間集めっから!」
『だいたいな、今どき誰がバミリに興味を持つって言うんだ? ここは名門、聖イスカリオテ学園だぞ?
床にはいつくばってテープ貼るなんてくだらんこと、誰がやりたがる? ・・・現実を見ろよお前ら。来年は受験だろう?」
「勉強はちゃんとやるよ! だから10月の公演まで! 稽古の最終日まででも良いんだ! やらせてくれよ!」
『・・・ダメだダメだ。さっさと帰れ!」
「なんだよちきしょう! お前に話した俺たちが馬鹿だったよ! ふざけんな! ぜってぇ5人集めて部活にしてやるからな!」
泣きながら走り出すふたり。
「先生・・・ちょっと厳しすぎたんじゃないですか? 話ぐらい聞いてあげても・・・」
古文の黒沢(26才♀)が話しかける。
『いや・・・いや、確かにそうかもしれません。私としたことが・・・つい。お恥ずかしい。しかし、バミリはそんなに簡単なものじゃない。あいつらにそれが出来・・・くっ・・・』
「ど、どうしました?」
『い、いや失礼、何でもないです・・・ちょっと、古傷がね・・・」
見るとそこには、かつてのバミリでついた無数の傷が・・・
『・・・バミリは、演劇界の格闘技とも呼ばれているんです。生傷なんて日常茶飯事だ。腕を折る奴もいるし、・・・気絶して、そのまま帰ってこなかった奴もいる。俺はあいつらに、そんな思いをさせたく、ないんです・・・」
「先生・・・」
『しかしそれでも・・・、もし、あいつらが本気なら・・・」
きっと俺は、奴らの申し出を引き受けてしまうだろう。
ひょっとしたらうまく行くのかもしれない・・・しかし・・・
それで良いのだろうか・・・
誰よりもバミリを知り尽くしているからこそ、答えのでない答えを、彼は虚空に求めた。
*****
というわけでね。
部員募集ですよ。
活動内容は、稽古前のバミリ。
3度のメシよりバミリが好きな方
ビニテを見ると興奮してしまう方
床にはいつくばるのが大好きな方
そんああなたにぴったりの健全な部活動です!
君もバミリで青春の汗を流してみないか!!